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オーダーメイド歯車 ビンテージオーディオ機器修理の専門家の方からのご依頼

割れてしまった歯車を含むユニット

こんにちは!

普段歯車を作っていると、ついつい忘れてしまいがちですが、一般的に歯車の作製は手間がかかるものです。

明治時代の様に手ヤスリで歯車材から形を作ったり、横フライスのベッドに割出機構を取り付けて、一歯ずつ削り出されている方を見たことが有ります。趣味の領域です。

製造業の中でも、現実的には目的の歯車がミスミやモノタロウで見つからない場合、
タミヤのギヤボックスや、ラジコンを分解してギヤを取り出す事が多いと聞いています。

それでも実際は、歯形が合わなかったり、素材が合わなかったり、歯数が合わなかったり、モジュールと呼ばれる歯の大きさが合わなかったりするそうです。

世の中にはモノが溢れているのに、どうしてこの様な事が起こるのでしょうか。

先日ご依頼いただきました案件を元に、そのあたりにも触れていきたいと思います。

 

今回は30年以上前の、ビンテージオーディオ機器の修理を専門とされている方から、ご依頼を頂きました。

割れてしまった歯車を含むユニット
古いオーディオ機器に内蔵されているギヤボックス的なユニット
図面の無い部品の製造に当たっては、相手部品は必須です。

これが今回ご依頼いただいた歯車部品を含む、ユニットの全容です。

不透明な黄色っぽい歯車を見てみると、、、

割れた樹脂歯車
ビンテージなオーディオ機器に内蔵されている歯車
経年劣化で割れてしまっています

画像では分かりにくいですが、割れてしまっています。

流石に修理をされている方だけあって、やり取りがスムースで嬉しくなりました。

最初から相手部品や、どうセットされるのかが分かるようにして下さったので、本当に助かります。

特に歯車は、軸間距離が作動に大きな影響を与えるため、単品では保証が絶望的に難しくなります。

ご依頼主様とメールや電話で、何を目的としたギヤなのかを確かめる事が重要になってきます。

 

今回はスムースな動作と、指でモーターシャフトに押し込む事が出来る。という点がポイントでした。

「スムースな動作と聞いた時には」内心ドキッとしましたが、現品のバックラッシュ(歯車同士のアソビ、バックラッシとも)が結構大きく歯当たりもピーキーではなかったので、「主に穴径仕事だな」と思い、ちょっとだけ安心しました。

 

実は数値上標準歯車であるっぽい図面も添付資料として頂いていて、歯数が奇数なのによく外径を測る事が出来たな!と驚いたのですが、

現品を測ってみると、標準歯車ではありませんでした。

でもモジュール(歯の大きさ)をピッタリ言い当てられていたのは、本当にすごいです。モジュールが分かっている歯車との歯当たりや見比べて同定されたのでしょうか。

きっと今回のお客様はオーディオ機器の修理に当たり、初めて歯車界独自の規格であるモジュールという概念を勉強されて、ハンドツールで測れる測定結果とネット上の情報を基に、寸法を決定して図面まで引かれたのでしょう。

その熱意と努力に、私は本当に感服いたしました。

 

ミスミやモノタロウの標準歯車や、タミヤのギヤボックスに内蔵されている歯車等が、モジュールが正しい筈なのに何故か合わない場合が多いのは、もう一つの変数である、“転位量”が関係しているのだと思います。

 

標準歯車の外径についてちょっとだけかみ砕いて説明してみます。(実用と理解の簡便化の為厳密にいうとそうではない部分の説明は省略します{インボリュート歯形や圧力角の説明すら省きます}ので、専門家や同業の方は☆印まで読み飛ばしてください。)

標準歯車の外径は、モジュール(歯の大きさ、図面では“m”と記述)と歯数に依って一様に決まります。

しかしながら、実際の製品に組み込まれている歯車が全て標準歯車である事は、殆ど無いように思います。理由は“容積を最小にしたい”からです。

実際の例を取ってみましょう。

マイクロギヤヘッド
マイクロギヤヘッドサンプル画像

ここに古いギヤヘッドが有ります。ギヤヘッドは、モーターの外径と合うように設計されたギヤボックスの事です。

手前の2軸で決められた軸間距離に、4対(画像上方に突き出している出力軸と部組された出力歯車のペアも入れると5対)の歯車の組み合わせ箇所が有りますが、どの組み合わせも、歯数が違います。

全ての歯車を標準歯車としてしまうと、組付けられなかったり、歯車同士が触れ合えなかったりするので、歯車のペアの数だけ、歯車の軸数を増やすか、モジュールを変えなければなりません。

思わずモジュールを変えれば、と書きましたが、モジュールを変えるのは、大変です。

 

何故ならば切削歯車はホブカッターという、歯車の歯形の形をした専用の刃物を使って、ホブ盤と呼ばれる特殊フライス盤で切削するのですが、先ずこのホブカッターが高級品なのです。

超硬製ホブカッターだと、ペットボトルのキャップサイズで、一個8万円くらいします。設計の度にホブカッターを新造していてはお金もかかるし作業ミスも増えます。

しかも対になる歯車のモジュールは同じでなければなりません。設計上も、融通が利きにくいです。

なので“転位”と言って、歯数とモジュールは同じまま、歯車の外径を小さくしたり、大きくしたりして対応します。

小さくする場合をマイナス転位、大きくする場合をプラス転移と言います。

マイナス転位すれば歯が細くなっていき、プラス転移すると太くなります。

標準歯車が計算上一番強度と歯当たりのバランスが取れているのですが、スケールメリットや価格には代えられない場合が多いですし、極端な転位量を取らない限りは問題は起きないので、手のひらサイズの小さなギヤボックスに入っている歯車は、転位している確率が、圧倒的に高いです。

 

 

話を戻します。

切削ではなく成型で作られている歯車は、型を起こしてそこに樹脂等を流し込んで作っていくので、場合に依りモジュールも任意に決められそうですが、設計者も変数が増えると等比級数的に計算量が増えるので、普通はそういった事はしません。

今回の場合、空間的余裕が有りそうだったので標準歯車なのかな?と最初は思いましたが、測ってみるとモジュールは普通で、マイナス転位していました。

 

穴径に関しては“モーターシャフトに親指で押し込める”具合で、との事でしたので、作成する部品全長に切ったPOM材料の穴径を、0.01mm刻みのリーマで少しずつ広げていって、良さそうな穴径を決定しました。

数量が100以下で、求められる形状が単純で、全長の寸法もシビアでは無かったので、今回はNC旋盤加工には掛けずに手加工で歯車材を作製することにしました。

やってみると、機械って偉大だという事が分かりましたw

ホブ盤に掛けて、出来上がった歯車を現品に組み込んで作動を確認して、納品です。

オーディオ機器用新旧歯車
生産中止になったオーディオ機器に内蔵された歯車部品の作製を行いました。
古いオーディオ機器に内蔵されているユニットの歯車を交換した様子
手に入らない歯車部品の製造も、ちゃんと連絡を取り合えば難しい事ではありません。

今回は形状がシンプルだった事もあり、サンプルを受け取ってから3営業日で対応させていただくことが出来ました。

後は実装して頂いて、問題が無ければ完了です。

 

どちら様も何かお困りのことがございましたら、歯車に限らずお気軽にご相談下さい!

また、古いオーディオ機器の修理でお困りの方がいらっしゃれば、コメント欄にてお問い合わせいただければご紹介出来る可能性が有ります!!

 

本日は以上です。

 

共通歴2019年5月27日追記

お客様からメッセージを頂きました。

こんばんは。お世話になります。

 

早速ギヤを使いました。全く問題なく、モーターシャフトの挿入感もサイズも完璧です。

 

素晴らしい製品に確かな技術をありがとうございます。

 

まずはご報告まで。

 

とても嬉しいです。

追記終り

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